
2012年度の税制改正案が昨年12月上旬に、続いて同月末には、消費税の税率引き上げなどの税制抜本改革を含む「税と社会保障の一体改革」案が発表されました。両者の関係はどうなっているのか、2012年度の税制改正の主な内容は何かなど、最新情報を紹介しましょう。

情報提供日/2012年1月18日
消費税率アップを含む税制抜本改正は数年後
2012年度の税制改正大綱は、例年よりも早い昨年12月上旬に閣議決定されました。自民党政権時代は12月下旬に大綱が発表され、翌年1月中旬に閣議決定。その後、通常国会で審議されて3月末までに翌年度予算案とともに関連法案が通過するという流れでした。また、大綱が一度閣議決定されると、内容はほとんど変わらずに通るケースが多かったので、大綱を見れば税制の変化を早めにつかむことができたのです。
しかし、民主党政権になってから一連の流れは大きく崩れています。2011年度税制改正案は、ねじれ国会による審議の紛糾や3月11日の東日本大震災の混乱もあって、年度末までに決まらずに2012年6月までずれ込みました。しかも、そこで決まったのは期限切れとなる特例の延長といったマイナーチェンジのみ。相続税増税などの大きな柱は、ほとんど継続審議扱いとなり、実質的に見送られました。
今回、税制改正大綱が早期に閣議決定されたのは、「税と社会保障の一体改革」案を昨年末までに出すというスケジュールが詰まっていたからです。こちらは消費税や相続税の増税を含む税制抜本改革案を盛り込んだもので、数年先の実施を見込んでいます。
消費税は2014年に8%、15年に10%へと段階的に税率が引き上げられます。相続税は、2011年度の税制改正案に盛り込まれていた内容そのままに2015年1月から、所得税の最高税率の引き上げも同じく2015年から実施すると記載されています。
一体改革案のほうは解散総選挙という政局も絡み、紛糾は必至の情勢です。3月末までの閣議決定や通常国会への法案の提出すら危ぶまれています。 2012年度の税制改正案も、大綱の通りに進むかどうかは予断を許しません。ただ、あえて意見の分かれる抜本的な改正項目を分離したことによって、2012年度予算と併せて通常国会で成立する可能性が高くなったのではないでしょうか。
そこで今回は、今年の活動に直結する2012年度税制改正大綱を基に解説することにしましょう。
贈与税の非課税制度の内容が拡充、適用期間も延長へ
マイホームに係わる項目で、もっとも大きいのは「贈与税の非課税制度」でしょう。この制度は、実の親や祖父母から住宅取得等資金の援助を受けた場合に、通常の110万円までの基礎控除に加えて、1000万円の非課税枠を設けることによって、贈与税の負担を軽減するものです。その適用期限が2011年末から2014年末まで3年間延長されます。
控除額は、取得する住宅の条件や贈与する年によって変わります。図2の通り、一定の省エネ性や耐震性を満たす住宅については、2012年が1500万円へと大幅に拡充。その後、13年に1200万円、14年に1000万円へと段階的に縮小されます。それ以外の住宅についても、12年が1000万円で、13年が700万円、14年には500万円になります(*)。
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震災の被災者については2013年と2014年も2012年と同額の非課税限度額となる。また、面積要件が一部変更される点に注意。以前は50u以上だけだったが、240u以下という上限が追加さる(震災被災者を除く)。
マイホームの購入に当たって贈与税の非課税制度を利用する割合は高いので、今回の延長と拡充案が通れば恩恵を受ける人も増えるのではないでしょうか。
なお、昨年度の税制改正で、土地の先行取得の資金も制度の適用対象として既に認められるようになっています。以前は、土地と建物を同時に取得するマンションや建売住宅にしか使えませんでしたが、土地を購入してから注文建築で建てる場合にも、この制度を利用できるようになったわけです。利用の幅が広がったといえるでしょう。
相続税の増税を視野に、相続時精算課税制度の利用は慎重に
相続時精算課税制度の住宅取得等資金の贈与に係わる特例も3年間延長されます。この特例は、本則では贈与者の条件を「65歳以上」の親に限っているのに対して、「65歳未満」の親でも適用が受けられように緩和するものです。贈与した時点では2500万円まで贈与税がかかりません。
相続時精算課税制度と贈与税の非課税制度は併用できますから、最大で「相続時精算課税の非課税枠2500万円+贈与税の非課税枠1500万円=4000万円」まで、贈与税をかけずに資金援助することが可能というわけです。
ただし、相続時精算課税制度の選択は慎重に行う必要があります。贈与した時点では4000万円まで贈与税はかかりませんが、「贈与税の非課税制度」の枠を超える部分については相続財産に組み込まれて相続税がかかる可能性があるからです。場合によっては、贈与税の節税分以上に相続税が膨らんでしまうおそれもあります。
2011年度税制改正では相続税の増税が見送られましたが、「一体改革」案には2015年から同じ内容の相続税増税案が盛り込まれています。これが通ると、相続税のかかる人の裾野が広がり、より課税の危険性が高まるかもしれません。 通常の暦年贈与も「贈与税の非課税制度」と併用ができ、最大1610万円(基礎控除110万円と非課税枠1500万円)まで贈与税がかりません。こちらは単年度で完結します。将来の相続のことまで考慮して、相続時精算課税を選択するかどうかを検討しましょう。
住宅ローン控除も「エコ」関連で拡充
省エネやエコをキーワードにした優遇措置が多く盛り込まれているのも、今回の税制改正の特徴の一つです。自動車関係では「エコカー」に対する減税が豊富です。住宅については大きな目玉はないものの、住宅ローン控除の一部拡充が予定されています。
住宅ローン控除は、マイホーム購入のために借りた住宅ローンの残高の1%を10年間に渡って所得税から控除する制度です(所得税から控除しきれない場合は住民税からも差し引けます)。
控除限度額は、入居する年と住宅の条件によって異なります。現行制度では、一般の住宅は、2012年に入居した場合が最大300万円(10年間の合計)まで、13年は200万円となってます。これに対して「認定省エネ住宅」の条件に適合すると、それぞれ控除限度額が100万円アップ。従来の認定長期優良住宅と同等の減税となります。
認定省エネ住宅に対しては図4の通り、登録免許税の税率も軽減されます。
認定省エネ住宅の内容は現在のところ未定で、今後の省エネ法改正に伴って示される予定です。昨年9月の民主党国土交通部門会議では「建築主などが建築物の建築・維持保全の計画を作成、所管行政庁に申請し、特定行政庁が認定する形」にするとの方針を出しています。既存住宅の窓を二重サッシにするとか、ペアガラスに交換するといった簡単なリフォームでは対応できない、ややハードルの高い条件になるかもしれません。
ただ、今後、住宅に係わる特例や軽減措置が適用される場合に、「長期優良住宅」と並んで「省エネ住宅」の認定が必須条件になってくる可能性もあります。税制改正の動向と併せて、認定制度の行方も注意深く見ていく必要があるでしょう。
次回は、2012年度税制改正大綱のうち、その他の内容について解説する予定です。
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